その者は育てたかった。例えるなら、砂漠に緑を育て、増やし、豊かにしたかった。しかし、蒔いても撒いても、芽すらも出ない。砂漠の砂漠たる所以を見せ付けられるばかりだった。そんな中、たった一つだけ、大きく立派な果実が育った。大切にしたかった。だが、大切なものほど、奪い去ろうとする者が現れる。彼は愛を与えたかった。でも、時代が、人が、それを許さなかった。だから、彼は代わりに罰を与えたのだ。自ら罪を犯しながら。そして、二人で育んでいったのだ。約34K文字、A6文庫サイズ123Pです。